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暗渠に滴る悦楽と苦悩の雫。 憂いの天使の秘谷に湧く甘露の泉。 存在の罪に震える器官からの分泌物。 魂の最奥の虚に響く水音を閉じ込めた水琴窟。
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私鉄の駅前商店街にある小さなランジェリーショップが優子の職場だった。
閉店時にオーナーである伯母が来るほかは、たいがい一人で勤務していることが多かった。

ある午後のことだった。
黒いジャージの上下を着た男が入ってきた。
ワゴンの安売りの二枚組みショーツを手に取り、クロッチの部分を広げてみたり、執拗に指で擦ったりしていた。
困ったなと思ったが、どう言葉を掛けていいのか分からなかった。
そんままどうしたものかと迷っていたところに、男の方から話しかけてきた。
「生理用のショーツありますか」
わざと声を裏返した薄気味悪い喋り方だった。
「あ、はい。そちらです」とサニタリーショーツのコーナーを指さした。
透明なパックに入ったものをひとつ手に取ると、男はレジの前にやってきた。
「サニタリーは生理の意味ですか」
「そうですね」と優子は適当な返事をした。
「これはどう使いますか」
「普通にお使いになれますね」
「パンティの上から穿くんですか」
パンティという言葉の、その何だかねっとりとしたいい方が嫌な感じだった。
「奥様かどなたかのでしょうか。お使いになる方はおわかりだと思いますが」
丁寧に話を逸らそうとしたが、男は聞いていなかった。
「直に穿いていいんでしょうか。ナプキンも使うんでしょうか」
「はい、ですから、お使いになる方はご存知でしょうから」
「ナプキンをこうやっておまたに当てて、それで穿くんでしょうか」
こうやってといいながら、男は自分の手を股間に持っていった。
うっかりそこに目をやって、嫌なものを見てしまった。
男はジャージの前の部分をこれでもかというぐらいに大きく膨らませていた。
狼狽したところを見せては男につけ入らせることになると思い、無視することにした。
「はい、お使いになる方はご存知だと思いますから」
同じ言葉を繰り返した。
男はサニタリーショーツを元に戻すと、今度はガードルを手に取った。
「サイズはこれで大丈夫ですかね」
そう訊きながら、ガードルを突き出た股間の前でヒラヒラと動かした。
「さあ、SMLがありますけど」
「Lなら僕でも穿けますか」
「大きいので大丈夫だと思いますけど」
「そうですか。でも、ほら、男は前に余計なものが出っ張ってるからね、どうかな」
そういいながら、男はわざとらしく前を突き出して見せた。
「どうでしょう、わからないですけど」
優子はあくまで無視を貫いた。
「試着してみてもいいですか」
厚かましい男だった。
「それは、あの、ちょっとお断りしているんですが」
「試着室あるじゃないですか」
「いえ、下の方のものはみなさん、お断りしてるんですよ」
「なんでかな、なんでお断りするのかな」
「店の方の決まりで、そうさせて……」
皆まで聞かずに男は言葉を継いできた。
「あ、わかった。汚れちゃうからだ。そうだ。女の人って、どうしても大事な部分をお汚ししちゃうもんね、どんなひとでも。誰でもそうでしょ、お姉さんもお汚ししちゃうんでしょ」
気持ち悪くてたまらなかった。
何と言っていなせばいいのか分からなかった。
「いえ」
「恥ずかしいことじゃないよ。女の人は生理的に汚しちゃうような体の仕組みに出来てるんだから。ね、大丈夫」
「お求めになるものはお決まりでしょうか」
努めて冷静に、優子は対応したつもりだった。
男は安売りのショーツを一組レジに持ってきた。
値段告げると男は財布を開け、バラバラと小銭を取り出し、その手を突き出した股間のすぐ前で構えて動こうとしなかった。男は小さく腰を前後に動かしていた。
できるだけ男の皮膚に触れないように、優子は一枚ずつ硬貨を摘み上げたが、どうしても指先が男の汗ばんだ掌に触れてしまった。最後の一枚を摘み上げたとき、男は人さし指の腹でさっと優子の親指の付け根を撫でた。
早く手を洗いたいとそれだけを優子は思った。
紙袋に入れたショーツを受け取った男は、すぐには出て行かなかった。
「あのう……」と再び話しかけてきた。「……お腹痛くなっちゃったんですけど、トイレ貸してもらえませんか」
「……どうぞ。そこのドアです」
優子はレジの横の扉を案内した。着替えをしようが、オナニーをしようが、何でもよかった。さっさと気が済むまで何でもして、早く出て行って欲しかった。
男はしばらく中に籠もっていた。
やっと出てきたと思うと再びレジの前に直立した。
「これ、お姉さんが使ったやつですか」
そういって男が差し出した手には、汚物入れに捨てたおりものシートが握られていた。
言葉を失う優子の目の前で男は小さく畳まれたシートを開いて見せた。
「これ、おねえさんの使ったやつですよね」
気分が悪くて、血の気が引いていくのが分かった。
「へへ、おねえさんの恥ずかしい秘密見ちゃった」
男はシートを鼻に当て臭いを嗅ぎ、それからべろりと舌でひと舐めした。


 

月の明るい夜だった。酔い潰れた私は、甲板の端にしゃがんで泣きじゃくる半ズボンを穿いた五歳の少年になっていた。
「坊や、こっちにおいで」
老人に手を引かれて船倉に降りていった。
たくさんの輪が回っていた。
地球儀や黄道儀があった。
牛飼いの娘の体がばらばらの部品に分かれて、そのそれぞれがそれぞれの軌道を回り終えてまた元に戻る機械仕掛けの人形があった。
「おっしっこを漏らしてごらん」と老人はいった。「そのまま、ズボンを穿いたまま」
いわれた通りに小便を漏らした。
老人は嬉しそうに笑いながら、熱く濡れたズボンを脱がせ、下半身を拭いてくれた。
「ああ、可愛い、なんて可愛いらしいおちんちんだろう」
そういって老人は、私の小さな肌色の突起を口に含んだ。
ねっとりとした肉の管の奥へと、ねじれながら吸い込まれていくような、老人の口の中の感触だった。痺れるような感覚に貫かれて、私は全身を震わせながら小便を漏らし続けた。

気がつくとそこは街外れの公園だった。
私はベンチの脚に背をもたれ、両脚を地面に投げ出していた。
ズボンは膝まで下げられ、剥き出しの局部が月に照らされていた。
根元まで濡れそぼったものが、だらりとだらしない姿を股間に晒していた。


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