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暗渠に滴る悦楽と苦悩の雫。 憂いの天使の秘谷に湧く甘露の泉。 存在の罪に震える器官からの分泌物。 魂の最奥の虚に響く水音を閉じ込めた水琴窟。
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 第一回 デメテルの痙攣 ⑤

初村は一個の白い粘土質の塊としてこの世に生を受けた。
まだヒトとしての形は持っていなかった。
初村の母親は俺の女だった。
ある晩、何の前触れもなく苦しみ出したかと思うと、床の上に這いつくばい、やがて粘液にま

みれた白い塊を頭部から分離排出させたのだった。
一見して頭蓋の裂け目から脳が食み出したのかと思えたそれは、当初、肥大した男根のような

曖昧な輪郭を持っていた。
その形を女が憎んだ。
女は塊を引っつかむと、寝室の衣装棚に閉じこもった。
中で何が行われていたのかは知る由もない。
三日が経過し、さすがに心配になって戸を開けてみると、女は息絶えていた。
股座から腹部にかけて肉のほとんどが失われ、そこに塊が蠢いていた。
半端に残されても処分に困るだけだと判断して、そのまま様子を見ることにした。
骨を除くすべての部位を塊は完全に喰い尽くした。
この母親殺しの塊を『初村』と名づけ、粘土を捏ねるようにして大雑把なヒトの形を与えた。
後は勝手に自分で育った。
宵闇に紛れて外に出ると、朝には体重を増やして戻ってきた。
三年も経ないうちに、初村は美しい青年に成長していた。


 

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