FC2ブログ
暗渠に滴る悦楽と苦悩の雫。 憂いの天使の秘谷に湧く甘露の泉。 存在の罪に震える器官からの分泌物。 魂の最奥の虚に響く水音を閉じ込めた水琴窟。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 

三月の終わり頃のことだった。
四谷三丁目のイメージフォーラムでヴェルナー・ネケス監督の『ユリシーズ』を観た帰りのことだった。約束の時間に女の家を訪ねると、女は地下室の階段下に素っ裸のまま逆さになって倒れていた。後頭部から血が流れてセミロングの髪をべったりと濡らしていた。
どうするか尋ねると「お願いします」と返事があったので、型通りにキスから始めた。
四十過ぎの痩せた女だった。生白く弛んだ肌が冷んやりと湿っていた。
頬から肩へ、肩から二の腕へと、全身を左手でまさぐっていくと、女は朦朧としながらも切ない声を漏らして手の動きに応えた。濃い陰毛を掻き分けて指を使った。唇と舌も使った。女の陰毛は濃かった。予めシャワーを浴びていないのは約束違反だったが、そんな状況ではなかったのだろうと察しておくことにした。女は眉間に皺を寄せ、固く目を閉じていた。口を大きく開き、息を荒くしていたが、やがて二度、三度、突っ張るように下半身の筋肉を硬直させるとそのまま静かに動かなくなった。
心肺の停止を確かめると、左手と口もとを拭い、持参した黒い布を広げて女の体を覆った。
三呼吸ほど待って布を取り払うと、あとには抜け殻だけが残された。
女の家を出て、閉園間際の新宿御苑に寄った。
満開の桜の下で布を払い、春の空に女の魂を解き放った。



管理者にだけ表示を許可する
http://raguan.blog79.fc2.com/tb.php/68-b552a734
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
// ホーム //
Powered By FC2ブログ. copyright © 2017 水琴窟 all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。