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暗渠に滴る悦楽と苦悩の雫。 憂いの天使の秘谷に湧く甘露の泉。 存在の罪に震える器官からの分泌物。 魂の最奥の虚に響く水音を閉じ込めた水琴窟。
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街道から一本裏手に入った通り沿いの、あばら家のような市営住宅だった。
空家だと思って玄関の引き戸を蹴倒して中に入ったら、住人がいた。
「すみません、すみません! 申し訳ありません!」警察に電話しようとするので必死に言い訳をした。「あんまり寒かったんで、つい。本当にすみません!」
「何いってるんですか、あなた、不法侵入ですよ!」
「空家だと思ったんですよ。夜っぴて歩いて、寒くて、眠くて」
「そんなこと関係ないでしょ、すぐ出て行ってください! とにかく警察呼びますから」
「ちょっと勘弁してくださいよ」
受話器を離そうとしないので腕をつかんだら、女は大きな声を上げた。
「やめてよ、何するんですか!」
面倒なので頬を強く殴りつけた。
女はその場に崩れておとなしくなった。
四十代の半ばくらいだろうか、肌が少し疲れてはいるがマアマアいい女だった。
顔を近づけ、目を覗き込みながら因果を含めた。
「いいか、俺は風の当らない暖かい場所で少し眠りたいだけなんだよ。分かるだろう、同じ人間としてその気持ちは?」
女が何か言おうとしたので引っ叩いた。
女は黙った。
「同じ人間として、俺に屋根のある場所で寝ることを許して欲しいだけなんだよ。権利だとか何とかいうつもりはないよ。ただ思いやりを示して欲しいんだよ。憐れみの心を。困ったときは助け合うのが人間だろ?」そこでもう一発、今度は反対の頬を思い切り張ってやった。「おとなしくしていてくれれば、もうこれ以上乱暴はしない。約束しよう。昼までだ。昼になったら出て行くから、それまで寝させてくれ。いいな。警察に連絡したり、人を呼んだりしないこと。大きな声を出すことは禁止だ。できればずっと黙っていて欲しい。俺が起きるまで外に出ないこと。これだけ守ってくれればいい。分かったな?」返事をしないので、拳を握って見せると、女は黙ってうなずいた。
「よし。じゃあ、服を脱いで裸になって」
女はギョッとした顔をしたが、声は出さなかった。
「そんな顔しなくていいよ。大丈夫、襲ったりしないから。ただ用心のためだから。人を呼んだり、逃げ出したりしないようにさ。分かったら、はい、さっさと脱ぐ!」
女はノロノロと服を脱ぎ始めた。
「よし、そうだ。パンツもだよ。全部脱いで、すっぽんぽんになって。オーケーオーケー。ほお、けっこう毛深いね。いや、いいんだよ、俺、毛深い方が好きだから。って、オラッ! 隠すなよ! よしよし、それでいい。そうしたらゆっくりその場でまわって。うん、きれいだ、きれいだ。じゃあ、いいよ、あとは自由にしてて。寝ててもいいし、テレビ観ててもいいし、好きにしてて。ただし、この部屋から絶対に出ないこと。トイレも我慢できなくなったら、どこか隅っこで済ませておいて。ああ、そこの屑入れを使えばいいな。よし、分かったかな? ハイ、じゃあそういうことで。以上、解散!」
冷蔵庫に入っていたもので適当に食事をして、コタツに入って横になり、目を閉じた。
たちまち深い眠りに落ちた。

乱暴に揺すられて目を覚ました。
手には既に手錠が掛けられていた。
部屋の中には警官がひしめき合っていた。
そりゃそうだよな、と思った。バカじゃなきゃ、警察を呼ぶよな、と。俺だって呼ぶもの。
女は台所で事情を訊かれていた。
当たり前だが、もう服を着ていた。
一発やっておいてもよかったかな、と少し後悔したが、まあでも、やってたら罪状が増えちゃってたなと、これでよかったのだと思うことにした。


おもしろい!!!いいですね!これ。好きだ!
[2011/11/11 Fri] URL // くろ #- [ 編集 ] @

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