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暗渠に滴る悦楽と苦悩の雫。 憂いの天使の秘谷に湧く甘露の泉。 存在の罪に震える器官からの分泌物。 魂の最奥の虚に響く水音を閉じ込めた水琴窟。
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どこにも帰り着けない路の途中ですれ違った女性の肩に小さなベアたんが乗っていた。
まばたきをしない女性の肩の上で、ベアたんもまばたきをしなかった。
ケタケタと女性は笑っていて、ベアたんもケタケタと笑っていた。
私もケタケタと笑い返した。

 ケタケタケタケタ ケタケタケタケタ
 ケタケタケタケタ ケタケタケタケタ

笑いながら悲しくなって、おちんちんを二人に見せつけてやった。
女性はケタケタと笑い続けていた。
ベアたんもケタケタと笑い続けていた。


 

女はガラス管の中で標本のように動かなかった。
若い女だった。
脂の乗った白い肌が全身を無表情に覆っていた。
重量感豊かな乳房は左右に分かれてゆったりと弛み、尖端だけを固く縮こませていた。
陰部の発毛は疎らで、陰唇は未発達だった。
魚類の唇に似た膣口にガラス管がねじこまれている様子を下方から観察することができた。
管は女のからだを貫通していた。
脊椎に沿って上体を突き抜けると裂開した頭部から漏斗状に口を開け、そのまま内壁を外壁に転じた裏返しの形で女の全身を足先まで内部に包みこんで、そこから再び下肢の隙間を上って先端を膣へと回帰させる輪環の構造をもっていた。

(女の内部は外へと開かれているのだろうか)

仮に貫通された部位の組織が接触面のガラスと融合、あるいは置換されて管のトーラス面の一部を形成していることがあるならば、そうだといえたろう。だが、実際にはどれほど密着しても組織がガラスと融合することはなく、置換されることもない。女の肉体はやはり閉じられたガラス管のトーラス体内部に厳然と隔離されているのである。


 
 第一回 デメテルの痙攣 ⑤

初村は一個の白い粘土質の塊としてこの世に生を受けた。
まだヒトとしての形は持っていなかった。
初村の母親は俺の女だった。
ある晩、何の前触れもなく苦しみ出したかと思うと、床の上に這いつくばい、やがて粘液にま

みれた白い塊を頭部から分離排出させたのだった。
一見して頭蓋の裂け目から脳が食み出したのかと思えたそれは、当初、肥大した男根のような

曖昧な輪郭を持っていた。
その形を女が憎んだ。
女は塊を引っつかむと、寝室の衣装棚に閉じこもった。
中で何が行われていたのかは知る由もない。
三日が経過し、さすがに心配になって戸を開けてみると、女は息絶えていた。
股座から腹部にかけて肉のほとんどが失われ、そこに塊が蠢いていた。
半端に残されても処分に困るだけだと判断して、そのまま様子を見ることにした。
骨を除くすべての部位を塊は完全に喰い尽くした。
この母親殺しの塊を『初村』と名づけ、粘土を捏ねるようにして大雑把なヒトの形を与えた。
後は勝手に自分で育った。
宵闇に紛れて外に出ると、朝には体重を増やして戻ってきた。
三年も経ないうちに、初村は美しい青年に成長していた。


 
 

肩に寝かせた散弾銃を十字に担ぎ、陽気なベアたんはタバコを噛んでいた。
「暑いな」
そういって口もとを引き締めると、薄く開けた唇の隙間から茶色に染まった唾液を飛ばした。肩から銃を下ろして、銃口を空に向けて構え直し、旋回する鳶の黒い影を狙うふりをした。
「バン!」
微笑みながら光る綿雲を仰ぎ、眩しげに目を細めた。
シャツの襟に、腋に、汗が染みていた。
「そろそろ昼飯が届くだろう。いいぞ、休憩にしよう。沼から上がって手を洗っとけ」
規則の運用には適度な柔軟さが必要だというのが、陽気なベアたんの持論だった。
十分長くおまえらを泥に浸けておいて、それでどうなる──と。
だから、皆が陽気なベアたんを愛していた。
他のヤツラに比べれば、という程度だが。
いざとなれば十二番口径の散弾銃を自分に向けてぶっ放すことを少しも厭わない相手を、人は心から愛したりするもんじゃない。
──俺を除いては。

沼地の作業に当る班は現場に建てられたバラックに押し込められる。
移動の無駄を省くためだ。
泥だらけになる作業にも係わらず、宿所に俺たち用のシャワーはなかった。
移送車が迎えに来てくれるまでの十日間は、乾いた泥でカピカピのままで寝ろということだ。
陽気なベアたんはこの衛生問題においても大いに融通を利かせてくれた。
日に三人ずつに限られたが、専用のシャワー室を開放してくれたのだ。
当然十二番口径の監視つきだが。
その日は俺が最後の三人目だった。
灰色に固まった服を脱いで、裸になった。
陽気なベアたんは俺をいつでも蜂の巣にできる距離で、椅子に腰掛けていた。
できる限り平静を保つように努めながら、コックをひねった。
ぬるい湯が頭上から降り注いだ。
そのときだ。
「おまえ、ちんこでかいな」
突然の予期していなかった言葉に、瞬時に火がついた。
血流がたちまち海綿体に流れ込んだ。
抑えが利かなかった。
理性は消し飛んでいた。
俺はそのまま、陽気なベアたんに向き直った。
陽気なベアたんは黙っていた。
何もいわず、動かなかった。
ゆったりと椅子に背を凭れたまま、ただ真っ直ぐに俺を見ていた。
俺は固くいきり立ったものに右手を添え、動かした。
ゆっくりと、視線を感じながら、緩く、強く、その先端を視線の元に向けて。
無言のまま、陽気なベアたんは立ち上がった。
シャツのボタンを外し、ジーンズのベルトを緩めた。
日に焼けた逞しい胸の筋肉が汗に光っていた。
はち切れそうな上腕の二頭筋に太い血管が浮いていた。
すべてを脱ぎ捨てて、大股で近づいてきた。
湯が茶色い巻き毛を濡らし、その雫が俺の肩に滴った。
ぶ厚い胸に指先で触れ、掌を置いた。
顫える手を滑らせて胸を撫で、縦に割れた腹筋を撫でた。
視野が狭まり、世界がまわっていた。
鼓動が早まり、息が止まりそうだった。
その息を唇が塞いだ。
大きな両手が俺の肩をつかんだ。
崩れ落ちそうになりながら、俺は陽気なベアたんの胸にしがみついた。
腕が背中にまわされた。
力強く抱き締められた。
陽気なベアたんの舌は噛みタバコの味がした。
長い接吻のあとにようやく抱擁が解かれると、俺はそのまま陽気なベアたんの前に跪いた。
目の前には愛しい肉塊が隆々とそそり立って、注ぎ続けるシャワーの湯に濡れていた。
先端に口づけをして、根元まで舌を這わせた。
そうして頬張った。
包みこんだ。
硬い銃身を喉の奥まで銜えて、引鉄に指を掛けた。

それが最初で最後だった。
次の移送で俺は班を外された。
陽気なベアたんに再び会うことはなかった。


 
 

実の姉がいるのだと突然聞かされた。
真砂の崖近くのアパートに独居しているのだという。
どうして今まで隠していたのか尋ねたが、母の返事はハッキリしなかった。
不思議な懐かしさがこみ上げてきた。
詳しい住所を聞き出して、会いにいった。
 
姉は卓袱台の向こうに座っていた。
太った若い女だった。
目はそこに開いた二つの穴ぼこのように無表情で、半開きの唇が赤かった。
「姉さん、はじめまして。弟の菜沖です」
挨拶をしてみたが、返事はなかった。
あとは黙って過ごした。
二時間、三時間、姉は置き物のようにじっと動かなかった。
長く風呂に入っていないのだろう、姉の体は酸っぱい臭いをさせていた。
ブラウスの襟は褐色に垢じみて、だらしなく膝を崩したスカートの奥に、白い下着がこれでもかと汚れているのが見えた。
その不潔さに劣情を抑えきれなくなった。
抱き寄せてみた。
拒む様子がなかったので、口を吸い、胸を揉んだ。姉はブラジャーをつけていなかった。
黙っていればいいのだと自分に理屈をつけた。
どうせ二度と会うこともない姉弟ではないか、と。
ブラウスの裾を引っ張り出し、手を差し入れた。カサカサに乾いた膚の手触りがあった。たっぷりと脂肪を蓄えた弛みきった腹の肉には、そのままそこに呑まれていきそうな不気味な底無し沼のような質感があった。
空いた右手で内股をまさぐった。
姉は相変わらず無表情のまま、半開きの唇を涎で濡らしていた。
下着を脱がせ、薄い毛叢を撫でた。指を溝に滑らせた。その指が後ろまで届いたとき、姉が初めて反応を示した。
口を真一文字に閉ざして、低く唸った。
牝牛が喉の奥で鳴くような声だった。
笑っているのだと気づいた。
名も知らない姉は私の手を押さえ、それをどことも知れない深い底へと導いていった。


 

火を吐きながら山の斜面を這い登っていく群れを、どうしてベアたんだと思ったのだろう。 
俺は服を脱ぎ捨て、裸になって、斜面を駆け上って先回りし、群れの前に大の字になって身を投げ出した。
一物が痛いぐらいに充血し、勃起していた。
先頭の一匹が足を止め、それをじっと見つめていた。
体長二メートルを越える大きな個体だ。
群れのボスだと思われた。
ボスは長い舌を二度三度チロチロと伸ばして、そそり立つものの様子を確かめた。
そうして刺激されるとますます血液が送り込まれ、自分でも覚えがないほどの大きさにそれは膨らんでみせた。
──ひょっとしたらパクンと咥えられてしまうのだろうか
恐怖と期待の入り混じった感情で胸がはち切れそうだった。
群れをベアたんだと俺は信じていた。
ボスが一歩近づいた。
それを咥えた。
少しざらついた口腔内のねっとりとした粘膜と舌の動きに包まれ、喩えようもない快感の衝撃波が股間から押し寄せてきた。
たちまち俺は上りつめた。
精の噴出とそれが喰いちぎられたのはどちらが先っだったのだろう。
血と精を噴き上げながら、俺は火山の新しい火口になった。
噴出す溶岩に群れを呑みこみ、赤熱した礫を麓まで飛ばした。


 

三月の終わり頃のことだった。
四谷三丁目のイメージフォーラムでヴェルナー・ネケス監督の『ユリシーズ』を観た帰りのことだった。約束の時間に女の家を訪ねると、女は地下室の階段下に素っ裸のまま逆さになって倒れていた。後頭部から血が流れてセミロングの髪をべったりと濡らしていた。
どうするか尋ねると「お願いします」と返事があったので、型通りにキスから始めた。
四十過ぎの痩せた女だった。生白く弛んだ肌が冷んやりと湿っていた。
頬から肩へ、肩から二の腕へと、全身を左手でまさぐっていくと、女は朦朧としながらも切ない声を漏らして手の動きに応えた。濃い陰毛を掻き分けて指を使った。唇と舌も使った。女の陰毛は濃かった。予めシャワーを浴びていないのは約束違反だったが、そんな状況ではなかったのだろうと察しておくことにした。女は眉間に皺を寄せ、固く目を閉じていた。口を大きく開き、息を荒くしていたが、やがて二度、三度、突っ張るように下半身の筋肉を硬直させるとそのまま静かに動かなくなった。
心肺の停止を確かめると、左手と口もとを拭い、持参した黒い布を広げて女の体を覆った。
三呼吸ほど待って布を取り払うと、あとには抜け殻だけが残された。
女の家を出て、閉園間際の新宿御苑に寄った。
満開の桜の下で布を払い、春の空に女の魂を解き放った。


 

ゆめの なかの ベアたんには
ちいさな おちんちんが はえていたよ


 

仔馬たちの肉体の
最も不潔な部分の痕跡をさがして
私は春の夜をさまよい歩く

鬱々として
やり場のない
怒りの発作に襲われながら

コートのポケットに右手を突っこんで
脂に曇ったハンマーの柄と
生勃ちの陰茎を交互にさすりながら

乾いた尿の香りに似た
春の夜の匂いに誘われるまま
欲望の発露の陰惨な過程を思い描きながら

朦朧として私はさまよい歩く
仔馬たちの肉体の
最も不潔な部分の痕跡をさがして

沸騰する体液の疼きを抑えきれぬまま
今にも泣き出してしまいそうな
劣情の惨めな虜となって


 

私鉄の駅前商店街にある小さなランジェリーショップが優子の職場だった。
閉店時にオーナーである伯母が来るほかは、たいがい一人で勤務していることが多かった。

ある午後のことだった。
黒いジャージの上下を着た男が入ってきた。
ワゴンの安売りの二枚組みショーツを手に取り、クロッチの部分を広げてみたり、執拗に指で擦ったりしていた。
困ったなと思ったが、どう言葉を掛けていいのか分からなかった。
そんままどうしたものかと迷っていたところに、男の方から話しかけてきた。
「生理用のショーツありますか」
わざと声を裏返した薄気味悪い喋り方だった。
「あ、はい。そちらです」とサニタリーショーツのコーナーを指さした。
透明なパックに入ったものをひとつ手に取ると、男はレジの前にやってきた。
「サニタリーは生理の意味ですか」
「そうですね」と優子は適当な返事をした。
「これはどう使いますか」
「普通にお使いになれますね」
「パンティの上から穿くんですか」
パンティという言葉の、その何だかねっとりとしたいい方が嫌な感じだった。
「奥様かどなたかのでしょうか。お使いになる方はおわかりだと思いますが」
丁寧に話を逸らそうとしたが、男は聞いていなかった。
「直に穿いていいんでしょうか。ナプキンも使うんでしょうか」
「はい、ですから、お使いになる方はご存知でしょうから」
「ナプキンをこうやっておまたに当てて、それで穿くんでしょうか」
こうやってといいながら、男は自分の手を股間に持っていった。
うっかりそこに目をやって、嫌なものを見てしまった。
男はジャージの前の部分をこれでもかというぐらいに大きく膨らませていた。
狼狽したところを見せては男につけ入らせることになると思い、無視することにした。
「はい、お使いになる方はご存知だと思いますから」
同じ言葉を繰り返した。
男はサニタリーショーツを元に戻すと、今度はガードルを手に取った。
「サイズはこれで大丈夫ですかね」
そう訊きながら、ガードルを突き出た股間の前でヒラヒラと動かした。
「さあ、SMLがありますけど」
「Lなら僕でも穿けますか」
「大きいので大丈夫だと思いますけど」
「そうですか。でも、ほら、男は前に余計なものが出っ張ってるからね、どうかな」
そういいながら、男はわざとらしく前を突き出して見せた。
「どうでしょう、わからないですけど」
優子はあくまで無視を貫いた。
「試着してみてもいいですか」
厚かましい男だった。
「それは、あの、ちょっとお断りしているんですが」
「試着室あるじゃないですか」
「いえ、下の方のものはみなさん、お断りしてるんですよ」
「なんでかな、なんでお断りするのかな」
「店の方の決まりで、そうさせて……」
皆まで聞かずに男は言葉を継いできた。
「あ、わかった。汚れちゃうからだ。そうだ。女の人って、どうしても大事な部分をお汚ししちゃうもんね、どんなひとでも。誰でもそうでしょ、お姉さんもお汚ししちゃうんでしょ」
気持ち悪くてたまらなかった。
何と言っていなせばいいのか分からなかった。
「いえ」
「恥ずかしいことじゃないよ。女の人は生理的に汚しちゃうような体の仕組みに出来てるんだから。ね、大丈夫」
「お求めになるものはお決まりでしょうか」
努めて冷静に、優子は対応したつもりだった。
男は安売りのショーツを一組レジに持ってきた。
値段告げると男は財布を開け、バラバラと小銭を取り出し、その手を突き出した股間のすぐ前で構えて動こうとしなかった。男は小さく腰を前後に動かしていた。
できるだけ男の皮膚に触れないように、優子は一枚ずつ硬貨を摘み上げたが、どうしても指先が男の汗ばんだ掌に触れてしまった。最後の一枚を摘み上げたとき、男は人さし指の腹でさっと優子の親指の付け根を撫でた。
早く手を洗いたいとそれだけを優子は思った。
紙袋に入れたショーツを受け取った男は、すぐには出て行かなかった。
「あのう……」と再び話しかけてきた。「……お腹痛くなっちゃったんですけど、トイレ貸してもらえませんか」
「……どうぞ。そこのドアです」
優子はレジの横の扉を案内した。着替えをしようが、オナニーをしようが、何でもよかった。さっさと気が済むまで何でもして、早く出て行って欲しかった。
男はしばらく中に籠もっていた。
やっと出てきたと思うと再びレジの前に直立した。
「これ、お姉さんが使ったやつですか」
そういって男が差し出した手には、汚物入れに捨てたおりものシートが握られていた。
言葉を失う優子の目の前で男は小さく畳まれたシートを開いて見せた。
「これ、おねえさんの使ったやつですよね」
気分が悪くて、血の気が引いていくのが分かった。
「へへ、おねえさんの恥ずかしい秘密見ちゃった」
男はシートを鼻に当て臭いを嗅ぎ、それからべろりと舌でひと舐めした。


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